木力館ブログ

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伝統的な構造材、赤松について

 今日は勤労感謝の日、このお休みは三連休と言う方も多くいらっしゃるかと思います。木力館は年中無休で開館しておりますので、ぜひともお越しください。

 今回は、先日行った視察について、少々お話しをしようと思います。
 私(おやじ)は先日19日、岩手県各地を視察の為訪れました。久慈市の久慈地方森林組合と、岩手郡葛巻町の製材所などです。

(写真はイメージです)

 岩手県でも北部に位置するこれらの市町村の林業では、赤松を「南部赤松」として様々な用材に加工したり、利用推進をはかっていると聞きました。これは興味深い事です。

 赤松と言いますと、昔から天然乾燥の赤松などは、建築材……丸太や小屋掛け、梁などの構造材として大変重宝されてきました。松は松脂(まつやに)が出ますが、このヤニが強度の秘訣と申しましょうか、他の建築材に比べて大変粘り強く、横架材としてはまさに最適な材と言えます。その他、差し鴨居など、力のかかる部分には松が使われていました。元々、昔から伝わる伝統工法には松は重要かつ主流の部材としてよく使われていたのです。それは東北地方だけに限らず、関東地方でも、古民家などの多くの建造物で使用されていました。
 その他の材料としては、ケヤキなどもよく用いられました。ケヤキは硬く強いので、松と同じく化粧材としても使われました。特に、先ほどお話しした差し鴨居は人の目によくつく部材なので、見た目にも美しい化粧材が求められたのです。
 最近では杉の梁などもよく使われる様になりましたが、昔は松の梁が構造材としてよく使われていました。それだけ用材として優れていた、ということの歴史的・経験的な証左でもあるのです。

 しかし、最近では松材の需要は落ち込んでいます。それは何故かといいますと、松は経年によりくるいやすいと言う特性が有る為です。つまり、伝統的な工法、目勘のきく熟練の大工さんでないと十分に使いこなせないと言う問題が有るのです。
 現在、いわゆる「木造建築」と呼ばれるものの多くは人工乾燥材や集成材を機械加工(プレカット加工)したものが使われますが、この機械加工では部材が「くるわない」事を前提として加工し、組み立てています。当然、自然乾燥の松を使いこなす事は大変難しいと言う事になります。
 最近ではコストダウン住宅と言いましょうか、価格競争の波にもまれて1円でも安く、経費や部材、人件費を切り詰めて短期間で家を完成させるといったやり方が多くとられています。それはそれでニーズが有るから良いのですが、そういったコスト削減重視の住宅では、自然乾燥、いわゆる無垢の松など伝統的な建築材を使う事は大変難しいのです。ハウスメーカーでも、こうした伝統的な建築材を扱う事は手間が掛かる(イコール経費が余計に掛かる)ので敬遠されがちです。
 また、近年ではマツクイムシによる被害も無視できない状況になっていると聞きます。マツクイムシにやられると木が枯れて倒れてしまいます。早急な対策が求められるところです。

 話が少々逸れましたが、赤松は大変素晴らしい材です。後世に伝え残していく為にも、今後の活用法を検討していかねばと痛感した次第です。
 さて、話は変わりますが、私(おやじ)は今月末から12月初旬に掛けて「伝統的構法の性能検証実験」に参加する事となりました。実物大の実験棟を作った上で人工的な震動を加え、損傷状況を調査するというものです。今回の実験は国の国土交通省が中心にとりまとめを行い、(財)日本住宅・木材技術センターが主催するもので、実験としては計2回も行う大規模なものです。この機会に伝統的工法の“つよさ”を現代的な工法の「数値」でどれだけ測ることが出来るのか、楽しみです。
 また私(おやじ)は材料研究問題の委員会委員としても現在活動しております。各種伝統工法及び自然乾燥の木材をもっと法律上認めて頂きたく、粉骨砕身の決意で日々精力的に勉強し、会議などに赴いております。この機会を何としてでも活かし、明日をよくしていきたいと願うばかりです。

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