2019年末から始まったコロナ禍は、日本はもちろん、世界に大きな打撃を与えております。そしてその影響は物流の混乱や物資の不足といったかたちでも表面化しております。ガソリン価格の高騰や半導体不足を始め、あらゆる物資の不足が表面化し、毎日の様にニュースに出ているような状況です。食料品関連の値上がりも続き、企業もご家庭も、頭の痛いところです。
材木業界でも多大な影響が出ております。いわゆる「ウッドショック」と呼ばれるものです。コロナ禍で中国とアメリカで住宅需要が高まり、主にこの二つの国が世界中の木材を買い占めるに当たり、世界的な木材不足となってしまったのです。この影響で輸入材の価格は約4~5倍に、それに引きずられるかたちで国産材も約2倍に相場が跳ね上がっております。
しかも、ただ価格が上がるだけならまだしも、現物が無い状況なので、家の新築や改築等に多大な影響が出ております。物理的に「モノが無い」となると、お金だけの問題ではなくそれを使うスケジュールにまで影響が出てしまっているのです。
このウッドショック、実は今回が初めてではなく、過去に2回同じ様な「価格の高騰」が起きています。但しいずれもやがては供給が落ち着き価格も安定傾向になりました。しかし今回はコロナ禍と言う特殊な状況で起きている事なので、材木屋である我々も先の見通しを立てる事が難しい状況です。恐らくは来年の2月か3月位に一段落するのではと言う見方も有りますが、価格が高止まりするのか、また下落するのかも予測が立てられません。非常に厳しい状況となっております。
では国産材はどうなんだ、木が余っているじゃないかと言う方もいらっしゃるかと思いますが、日本の林業はすぐに材木を増産出来る体勢にはなっておりません。またウッドショック後の事を考えるとうかつに増産するのも難しい(ウッドショックが収まった場合材木が余って価格がさらに下落するのでは、との予想)と言う林業現場の判断も有り、すぐに木を切って出荷する、と言う事はとても厳しい状況なのです。
これらウッドショックの影響を受けるのは材木業界だけでなく、この業界に関わる製材業の方、またハウスメーカーや工務店、そして家を建てる施主さん(エンドユーザー)にまで及びます。木材価格の高騰が家の値段を吊り上げてしまい、ウッドショック前よりも高いお金を払ってしかも長く待たなければならない、そんな状況が続いています。
我々材木屋としても心苦しいところはありますが、業界全体でこの苦難をどう乗り越えるかが課題です。特に我々のような小規模の、町の材木屋は大変です。
また先にもお話しした通り、現代の家づくりに於いては木材だけでなくさまざまな設備や建材、電化製品等が必要ですがそれらも全体的に品不足や価格の上昇、また工期の遅れや工事の先送りに伴う人手不足等に見舞われており、「家づくり」そのものが難しい状況となっております。給湯器やトイレの部品不足がニュースになったのも記憶に新しいところです。
しかし、国産材については今回のウッドショックがただ悪いだけではないのでは? とも思います。ウッドショック前の国産材の価格は約60年程前の値段と一緒でした。60年前は確かに木は高かったのですが、値段が(ウッドショック前の話ですが)60年前と同じとなると、当時との物価の違いから近年実質的に「木は安いもの」となっていました。
木の価格が安過ぎると必然的に林業や製材業、材木業等も衰退していきます。一時期日本の木材自給率が20%を切る時期もありましたが、令和2年度の統計を見ると41.8%となり、木材自給率もかなり持ち直してきております。それだけ国産材が使われるようになったと言う事です。
ここで木材の価格がある程度上がる事により、木材が本来の適切な価格となり、それにより国内の林業の復興や森林環境保全につながるのでは、といったプラスの見方もできるのではないでしょうか。
最後に、現在木力館ホームページに記載している各種情報やデータ等については、基本的に執筆・公開当時のものですので、現在のウッドショック下では状況が変わっているものもございます。各記事に関して詳しくは木力館までお問い合わせください。