木力館ブログ

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伝統的建材と新建材について

 関東では梅雨の最中ではっきりしない天気が続いておりますが、皆様いかがお過ごしですか。

 今回は、伝統的建材と新建材について、お話しをさせて頂こうかと思います。

 まずは「伝統的建材」について私(おやじ)なりの定義をさせて頂きますと、まずはおおもとが自然素材(由来)であること、主に自然のちからを使って生産がされたものであること、工場で大量生産された一律の規格品・工業製品(加工品)ではない、と言うことです。例えば自然乾燥(天然乾燥)の材木、藁や土壁、竹などがこれにあたります。
 対する「新建材」とは、工場で大量生産された品(一律規格の品)、化学的に合成された品である事です。集成材や人工乾燥材、アルミサッシなどがこれにあたります。
 これはあくまでも私(おやじ)なりの定義であり漠然としたイメージですので、異論ある方もいらっしゃると思いますが、まずは続きをご覧下さい。

 「伝統的建材」は、主に自然のちからを使って素材の熟成・生産が行われます。たとえば、木材を自然乾燥させる、藁を天日干しする、などです。つまり、生産にかかるエネルギー消費量が少ない事が特徴です。自然のちからを使うので、環境に無理な負荷を掛けず自然にやさしいとも言えます。
 また木材(自然乾燥材)は植物の光合成により木の中に炭素を貯蔵しているので、地球温暖化防止の効果があるといわれています。例えば3寸5分(10.5cm)角、3mの杉の柱一本には、二酸化炭素22kg分の炭素を貯蔵しています。これが木造建築物となると、120平米の木造住宅(約23立米の木材を使用)では二酸化炭素をなんと18t分も貯蔵している事に等しいのです。木の家が「第二の森林」といわれる所以です。他の建築材料では、二酸化炭素の貯蔵は難しいでしょう。

 一方の「新建材」は、化学的に加熱や合成・精錬・加工などのプロセスを行いますので、相当のエネルギー消費が掛かります。合板には接着剤が使われ、鉄やアルミニウムの生産には莫大なエネルギーが必要です。例えば、図の様に建材ひとつとっても、木材と鉄、アルミニウムの製造にかかるエネルギーコストは数十倍と大きく差が出るのです。製造時の二酸化炭素排出量を見ても、それは一目瞭然です。エネルギーが掛かるという事は、それだけ自然環境に負荷を掛けているのでは、と私(おやじ)は思えてなりません。

(例1)1立米(1m3)当たりの
製造時二酸化炭素排出量

木材(人工乾燥製材) 0.4t/m3
鋼材           19.5t/m3
    (人工乾燥材の約 53倍)
アルミニウム     80.7t/m3
    (人工乾燥材の約220倍)

(埼玉県「県産木材の利用推進
の方策」より抜粋)

(例2)各種材料の製造時の
消費エネルギー(木材を1とした
ときの比較)

木材            1
鋼材          191
アルミニウム     791

(全国木材共同組合連合会
「もっと木造住宅を!」より抜粋)
 材木ひとつとっても人工乾燥材と天然乾燥(自然乾燥)の材木では製造コストが大きく違います。人工乾燥材は、高温(一般的な柱材の場合摂氏130度前後)の釜の中に木材を入れ短時間で一気に木材の水分を抜きます。高温に加熱しなければならないので、その分の燃料代などが掛かります。
 また急激に高温で乾燥させるので、表面には現れなくとも木材の内部で割れが生じますし(内部割れ)、木本来の持つ粘り強さや香り、色つやの良さ(木の持つあぶら)が抜け落ちてしまうと言われています。人工乾燥材は「乾いたスポンジ」と揶揄されることもあります。

(天然乾燥材(左)、人工乾燥材(右)両者の外見上の比較)

 (天然乾燥材の干割れ(切断面から))

 (人工乾燥材の内部割れ(切断面から))

 これは私(おやじ)の意見なのですが、例えば植物を高温の釜の中に入れたら、生きていると思いますか? 仰る通り、木材は伐採された時点で植物としては“死んで”いますが、「木材」としては“生きて”いるのです。自然乾燥材の割れや狂い、反りなどの変形は、その証拠です。
 自然乾燥の木は空気中の水分を吸ったり吐いたりする「調湿効果」が有ると言われていますが、人工乾燥材にはそう言った「調湿効果」は有りません。そういった意味では、人工乾燥材はもはや材木ではなくただの「木のかたちをした建築資材」と捉えたほうが良いかも知れません。
 当然、木の香りも乾燥方法によって全然違います。この辺りは実際に体感していただかないと分からないので、ぜひ木力館にお越し頂き、サンプルを手にとって体感して頂きたいと思います。

 最近では材木の「輸送に関わるコスト」が環境に負荷を与える要素として注目されています。例えば、埼玉で家を建てるなら、埼玉県やその近隣で採れた木材を使う方が木材運搬費や流通経費の面から有利で、環境への負荷と木材の価格双方を低くおさえる事が出来ます。一方で遠い都道府県や外国から木材を輸送・輸入するとなると、トラックや船、飛行機などで輸送しなくてはならな
いので、環境への負荷も掛かります(二酸化炭素の排出など)。

 地元でとれた木を使う事は、地元の林業、それに関わる流通業、加工業、そして建築業など、さまざまな業種の地域産業の雇用や振興につながります。また地元の林業の活性化となると、森林整備による公益的な面の安定にも繋がります。森林は水や空気をきれいに、おいしくしてくれますし、それ以外にも土砂崩れや洪水の防止(保水効果)など、森林にはさまざまな公益的な側面を持っています。
 森林が豊かであれば、流れる川から続く海が豊かになり魚介類や海産物も豊富になる、と言う報告も各地でされています。森林が豊かであればそこから流れ出る栄養も豊富と言う事で、漁場も豊かになると言うつながりです。実際に、海の漁師さんが漁場へ流れる川の上流の森林を育成するケースがある程です。
 それらさまざまな活性化・安定につながるので、地元の木材を使う事は大変有益です。
 実際に木を使う方にとっても「地元の木を使う」ことは地域への愛着をもつと言う意味で重要ではないでしょうか。
 さて、少々話が脱線しましたが、本題に参りましょう。現在、木造の住宅をつくるうえで、「伝統的建材」はどれくらい使われているのでしょうか? 私(おやじ)の想像では、おそらく5%、せいぜい10%にも届かないのではないでしょうか? 今の家は「新建材」を9割近く使った家づくりが盛んに行われています。
 一部のメーカーは「これは自然素材ですよ」と謳って「新建材」をお客さんにすすめているところもあります。この辺りの定義は、厳密にはJAS法などの法律も絡んでくるのですが、ひいき目に見ても「これは明らかに違うだろう」と思われるものまで「自然素材」と言っているケースが横行しています。この問題については、実際にそれらを使うお客様がそれぞれ勉強していただき、正しい知識を身につけてもらう他ありません。
 木力館では、この点についても実際にサンプルなどをご用意して説明させていただいたおります。ぜひ一度ご来場下さい。
 「新建材」による家づくりは、本当の「注文建築住宅」ではない、というのが私(おやじ)の持論です。「新建材」の家づくりは、画一化・均質化された建材をお客さんの要望に合せてある種のパターンから選んで組み合わせるだけです。極端な言い方をすれば、自動車の様に“パーツ選び”“工業製品”化してしまっているとも言えます。
 まるで自動車を買うような、「オプションはあれとこれを、外見の色はこの色で」そんな安易な傾向が、いまの家づくりには有るような気がしてなりません。家は車のような工業製品ではありませんし、車のように簡単に乗り換えや買い替えが出来るものではありません。そこに住み、暮らすのですから当然です。

 ただ勘違いしないで欲しいのですが、私(おやじ)は「新建材」が全て悪いと言っているわけでは有りません。例えば暑さ寒さをしのぐ為の優れた性能や大量生産によるローコストなど、良い面は有ると思っています。但し、人間として健康に暮らすには、そして長持ちする家づくりをするには、果たしてどちらの方が良いのか、と言いたいのです。

 少し「新建材」や快適な住宅設備の量を減らして、夏は多少の汗をかき、冬は少々の寒さに慣れながら、四季折々の環境の変化と共に生きるのか。それとも、人工的に夏も冬も一定の温度のなかでで、まさに年中「温室」的な暮らしをするのか。
 この辺は多少人生哲学になる部分もありますが(笑)、やはり人間は「いきもの」ですから、日本の四季、季節の移り変わりを多少なりとも身体で受け止め、暮らすのが真に健康なことだと私(おやじ)は思うのです。皆様はいかがお考えでしょうか。

 家に使われる木についても同じです。自然乾燥した木は材木として「生きて」いますので、木にとってもある程度「快適」な環境をつくらなければ、長持ちしません。確かに木の事ばかりを追求し過ぎても快適な住まいづくりは難しいですが、その辺りはうまく折り合いをつけて、「伝統的建材」や「伝統的工法」を適材適所に使い、家をつくり、住み、暮らす。このことが、環境にも、地元の林業にも、そして家に住まう人にとっても健康で幸せなことではないかと、私(おやじ)は思うのです。
 最後に、私(おやじ)としては、「伝統的建材」は「新建材」と決定的に違う、と言うことを申し上げたいのです。それは今までにお話ししたさまざまな事もそうですが、例えば壁や柱を両者でつくって見比べたとき、本物の「伝統的建材」と「新建材」は明らかに違うと思うのです。

 「伝統的建材」とりわけ本物の木材は、色つやの良さや経年による風合いの変化、よい香りなど、本物たる素晴らしいちからを私達にみせてくれます。見てよし香りよし手触りよし、まさに全身・五感で体感できるのです。また使い込むほど味わいを増し、一度(建材として)使い終わってもまた(各種製品の原材料や燃料など)リサイクルができ、消費から再生と継承することができます。あるべき循環型社会にふさわしいものです。

 一方の「新建材」は表面に木目の柄をプリントした合板の壁材や柱などが多いです。これらは一見しただけでは伝統的建材と違いがあまりよく分かりませんが、「新建材」は特に良い匂いもしませんし、使っていくうちに表面が薄くはがれてきたりと、何処かしらに必ず違いが出てきます。そこには本物のもつ「重み」や「味わい」は無いと思います。ただ古くなるだけ、消費した後は廃棄と、資源的な循環は(伝統的建材に比べて)しにくいのではないでしょうか。
 私(おやじ)としては、全部とは言わないですが、なるべく少しでも本物に触れていただき、その素晴らしさを実感、体感していただきたい、出来れば少しでも使っていただきたいと思います。
 木力館では、埼玉県の木や林業に関する様々な情報を発信しております。ぜひお気軽にお越しいただき、木についての知識を体感して下さい。お待ちしております。

4 Replies to “伝統的建材と新建材について”

  1. SECRET: 0
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    人口乾燥材にすると調湿性が損なわれると言うのはあまり考えた事はありませんでした。ただ、近年は施主が難しくなってきていて、木が割れたり、反ったり、収縮したりすると大きなクレームになってしまいますので難しい問題です。設計士自体が木の性質を知らず、無理な構造や建具をよく書いてくれます。困ったもんです

  2. SECRET: 0
    PASS:
    コメント有難う御座います。
    ブログ本編の繰り返しになりますが、人工乾燥の木材は強制的に乾燥させているので、本来の木の性質を殺してしまうのに等しいと私(おやじ)は考えております。
    130℃もの高温の中で木が生きているのか、と言う話です。
    何よりも強調しておきたいのは、自然乾燥の木が動くのは欠点・欠陥ではない、と言う事です。
    貴方の仰ったいわゆる「クレーム」は、工務店、大工、設計士、そして家の施主さんに限らず、木の事を知らない人が多過ぎる為に起きている事です。
    木力館で私(おやじ)が木の事について説明すると、「初めて知った」「納得した」と言う方が殆どです。つまりそれだけ、木に関心が無い、そして知識もない為に起きている事なのです。
    つまり「自然乾燥の木は動いて当たり前」であることの説明と勉強が必要です。自然乾燥の木の干割れは、欠点ではありません。(見た目の美観的な価値観はともかく)、割れた方が木は強くなるのです。
    (続きます)

  3. SECRET: 0
    PASS:
    昔からの伝統的な家づくりでは、自然乾燥の木に自然素材しか建材が有りませんから、例えば柱材には割れを極力見えなくする為の「背割り」などの技法を巧みにこらし、木を上手に使ってきたのです。
    それを、木の事を全く知らずにやれクレームだの言うのは、根本がおかしいと言わざるを得ません。
    家を建てる前に、自然乾燥の木を使うなら、こうした木の特徴をまず建てる側(工務店も設計士も)が知り、その情報を的確に伝えて、そういった木の特徴を許容出来るかどうか施主さんに確かめるのが筋です。
    説明した上で、施主さんが「木が割れたら嫌だ」と言うなら、「人工乾燥材」なり「集成材」なり合板等新建材を使えば良いと思います。人の好みはそれぞれですので。
    但し、ブログ本文でも申し上げた通り、本当に人の健康に良いのは何か、と言う事も考えた方が宜しいかと思います。
    それらを踏まえて、皆様には、もっと木に関心を持って、木の事を知って頂きたい。これが私(おやじ)の願いです。

  4. SECRET: 0
    PASS:
    本当にそうです、この間は塩地の枠材が仕様になっていて、乾燥材がなくてとても建具に使えるものではないと設計士と押し問答になりましたが、立場上引くしかなく、建具の隙や反りが出ても知りませんよと念を押しました。・・・・・・が2ヵ月後酷い状況になりました。施主にも念を押したのにかかわらずクレームの対象です。自社の設計施工ではそんなアホな事はしませんが、木工事を請けている場合は立場上仕方ないですね。

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