木力館のとりくみ

イベントレポート

サマースクール『親子木工工作体験と館長講演会』

酷暑の候、皆様におかれましては、いかがお過ごしでしょうか?

はじめに

令和5年7月29日(土)日に、下落合公民館2階ホールにて、サマースクールの一環として『親子木工工作体験』を下落合公民館主催の元、木力館が実施いたしました。
この活動は、埼玉県産の木材に実際にふれてもらい、木材の感触やにおいを五感で感じてもらうことを目的としています。
また、県産材の良さや使う必要性、地産地消の促進、SDGsの活動に興味を持つことを願って行っているものです。

当日は10組の親子が参加し、楽しいひとときを過ごしました。

体験の詳細

参加する親子たちは、A4ファイルを収納できる小さなブック立てを作る特別な体験に参加しました。
この工作活動では、埼玉県産の無垢のひのき材を使用しており、その自然な香りと質感が感じられる製品となっています。
あらかじめ形にカットされ、釘穴に小さな穴が開けられたキットが用意されていたため、参加者は手間をかけずにブック立ての基本形状を整えることができました。

その後の組み立て作業も比較的簡単に進められ、親子で協力しながら楽しむことができました。
キットの準備から組み立てのプロセスに至るまで、すべてが慎重に計画され、親子の絆を深め、創造性を促進するように設計されているのがこの活動の特徴でした。埼玉県産のひのき材を使った工作体験は、地域の素材を活用する意義と、木材の温もりを感じる貴重な機会となりました。

作業の様子を見ていて感じたことは、親子で協力してゆっくり確実に作業する方や、お子様がメインで作業をして、それを観察しながら適材適所でサポートをするお父様やお母さまなど、様々な親子がいました。
この企画の趣旨である親子の絆を深めることが、多くの参加者にとって実感された瞬間でした。
この企画が良き思い出になってくれることを願っております。

さて、5分の休息をとり、後半は椅子に座って木力館館長による講演会です。

~ 館長の木にまつわるお話 ~

木の博物館 木力館 館長 大槻忠男

無垢の木材と新建材
館長は無垢の木材と新建材の特性とそれらの選択が人々の生活にどのように影響するかについて詳しく説明しました。
無垢の木材は自然な質感と美しさが魅力で、特に桧の木の香りにはリラックス効果があるとされています。
かつて木造建築が主流だった時代には、木の香りの効果により「キレる少年」が現在より少なかったとも指摘されているのです。
無垢の木材は湿度調整や断熱効果も持っており、一方、新建材は耐久性や機能性を追求した結果として開発され、軽量で強度が高く、さまざまなデザインや用途に応じてカスタマイズできるという特性があります。
現在、学校関係の建築物に木造が推奨されており、自然素材の温もりと健康への利点が再評価されているのが特徴です。
館長は、これらの材料の適切な選択と利用が、建築デザイン、環境への影響、住む人々の健康や快適さに影響を与え、持続可能な社会の構築にも寄与すると説明したのでした。

無垢の木材と新建材の選択が、建築デザイン、環境、人々の健康や快適さにどのように影響するかについての話題は、参加された方々にとって非常に興味深いものでした。

森林環境問題
森林の減少と破壊は、気候変動の促進、生物多様性の喪失、土壌の浸食、水源地の枯渇などの地球規模の問題を引き起こしています。
特に、森林が二酸化炭素を吸収し酸素を生成する役割、動植物の生息地としての重要性、土壌と水源地の保護などが挙げられるのです。
館長は、これらの問題の解決には持続可能な森林管理と地域社会の協力が不可欠であると強調し、地域の森林資源を保護し、再生し、適切に利用することで、これらの問題の解決が可能であると説明したのでした。

全国の森林保有率の過去と現在
過去数十年で全国平均の森林保有率が10%以上の減少傾向にあるという衝撃的な事実が明らかにされたのです。
この減少は、都市化の進展、農地の拡大、森林伐採などによるもので、その結果として生態系のバランスの崩れや土壌の浸食、水源地の枯渇などの深刻な問題が発生しているのが現状です。
館長は、この現状を改善するためには、持続可能な森林管理と地域社会の協力が不可欠であると強調したのでした。
参加された方々は、森林の重要性とその保全に対する理解を一層深める貴重な機会を得ることができたのです。

森林と水の関係
森林が水源地としての役割を果たし、水の浄化作用を提供することはよく知られています。
しかし、館長はさらに、この関係が日本海の魚がおいしい理由と密接に関係していると指摘しました。
森林が豊かな地域では、清潔で豊かな水が流れ、それが海に注ぎ込まれることで、海の生態系が豊かになります。
特に日本海側の地域では、山から海への距離が短く、森林からの清流が直接海に流れ込むため、魚の生息環境が良好で、その結果として魚がおいしくなると説明しました。
この話は、森林の重要性が私たちの食生活にも直接影響を及ぼしていることを示す興味深い例でした。

木力館としては、今回のイベントが参加された皆様にとって有意義な体験となり、木工や森林環境への興味を深めるきっかけになったことを大変嬉しく思います。
親子のコミュニケーションを促進し、新しい趣味や興味を探求する場として、今後も地域の皆様に楽しんでいただけるようなイベントを企画してまいりますので、ぜひご参加ください。