館長 木を語る

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14.「木の家は高い」それは本当の事ですか?

木力館(きりょくかん)にお越し頂いた方にお話しを聞くと、「木の家は高い」と思っている方が多く居らっしゃいます。昔のイメージを引きずっている方もおれば、「ハウスメーカーで高いといわれた」など、理由はさまざまです。その事について少しお話ししてみようかと思います。

木の家の内部構造(画像はイメージです)。

昔は、確かに木の家は高かったです。昔は、所謂「庶民」が一戸建ての家を持つのは難しかった。それは木の価格にあります。
今の国産材の価格と、約50~60年前の国産材の価格はほぼ同じです。それはどう言う事かと言うと……約半世紀前と今の物価の差を考えてみてください。
価格が同じと言う事は、昔は木の価格(価値)が高く、そして今は低い(相対的に安い)、と言う事が分かるかと思います。価格と価値の変遷は、例えて言うなら、今と昔の食品の「卵」と同じようなものです。

次に、大手ハウスメーカー(の多く)は家の建築費の中に、TVCM等の宣伝広告費用、モデルハウスの維持費等が(実質的に)入る事もあります。外構回りなどは、家の本体価格とは別料金で見積もりを出す所が一般的です。
最終的に、当初の見積もりより高くなる理由は大抵こう言うカラクリがあるのです。これでは「木の家」が高く見えて当たり前ではないでしょうか?

また大手ハウスメーカーが採用している今の一般的な家づくりは、機械加工(プレカット)による「在来工法」と呼ばれるもので、天然乾燥材や自然乾燥材といった「無垢材」ではなく、集成材や人工乾燥材といった「新建材」を工場で予め加工して、現場で組み立てるだけのつくりです。伝統的な大工さんの技術はそこにはありません。
そして大手ハウスメーカー(の多く)がよく口にする「注文住宅」といっても、カタログを見て、いくつかのパターンの中から選ぶだけ。
それは本当に「注文住宅ですか?」と館長の私(材木屋のおやじ)は聞いています。

本当の注文住宅とは、住む人の家族構成から家族の利き手の側まで生活スタイルを調べた上で、設計士が家の間取りを決め、熟練の大工さんや職人さんが腕を振るい、建てるものだと、館長の私(材木屋のおやじ)は考えます。
「そんな事をしたら価格がもっと高くなる!」と思ったあなた。本当に、同じ仕様で値段を比べましたか? 大手ハウスメーカーの中だけで話を進めて、決めていませんか? 工務店や設計士にもよりますが、無垢材を使った木の家を建てても、値段はハウスメーカーの注文住宅と同じか、安くなる事も往々にしてあるものです。
その為にも、家を建てる為には、ユーザー自身がもっと勉強する事が大切です。前回お話しした見積もり合わせを行うなど、ユーザー自身が賢くなる事も大切なのです。

今は内容を見ず、価格を合わせるだけ、「数字合わせ」の世の中であり、内容、仕様まで詳しく踏み込んで精査するユーザーは殆どいません。
例えば同じ寸法の「桧(ヒノキ)」材でも、樹齢が20~30年の若い木と、樹齢100年以上の木では価値が何倍も違うし、耐久性などが全く違います。ことばだけ、数字だけが一人歩きして、内容が見られない。これが問題なのです。
よく「高いから値引きしてくれ」と言うユーザーも多いと思います。既に出来上がった家(建て売り住宅等)を買う場合はまだしも、これからつくる家を「値引き」しても、安くした分、本来の仕様よりも安い材料を使われるだけで、得した事にはならないのです。当然、こんな事では家が長持ちする筈もありません。
木力館では「家づくりは、価格の事だけで決めてしまうのが一番良くない」とお話しさせて頂いておりますが、まさのこの事と言えましょう。

同じ太さの材木でも、樹齢によって木の性質は違ってきます(写真はイメージです)。
 少々話がずれましたが、伝統的な建材を使った家づくりでも、構造駆体だけは無垢材と伝統工法を用いる、それが無理でも内装に無垢材や自然素材を使うなど、要所要所、部分的に使う事でも、「木の家」は出来るのです。
それはけっして高いものではありません。「高い」と言うのは先入観と言わざるを得ません。
それでも「木の家は高い!」と仰るのであれば、館長の私(材木屋のおやじ)にぜひ会って、話を聞いて頂ければと思います。
世間に流れるイメージや先入観、ハウスメーカーの言う事に惑わされず、本当の木の話を聞いて頂ければ幸いです。