館長 木を語る

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2.日本の自然環境と森林

さて、今回は少しスケールの大きな話をしようかと思います。自然環境と森林についてです。

人間は、水と食料、そしてきれいな空気がないと生きられません。人間は1日当たり毎日最低で約2kgの水が必要で、同じく毎日約2kg程度の食料が必要といわれています。ところが空気はなんと10倍の20kgを体内に入れる必要があるのです。空気の重さは「1リットル当たり1.293g」といわれています。つまり「1立方m当たりだと1.293kg」、20kgでは約15.5立方m。大まかなイメージとしては、4畳半の部屋一部屋分程度の空気が1日に必要、と言う事になります。

その空気をきれいに、おいしくしてくれるもののひとつが森林です。日本は世界でも有数の森林大国と言われています。家の近くの里山、そして野山に広がる山林……、古来より日本人と森林は深いつながりがあるのです。
また、日本の国土面積の実に2/3が森林である、(国土面積における森林面積の比率(森林率)を計算すると、なんと70%にもなります)といった事からも、日本は世界の先進国の中でも特に森林の豊かな国であると言えます。

木は人の心を癒してくれるという言葉をよく聞きます。理由は様々だと思いますが、こんな説があります。「人間の遺伝子には森にいるサルと90%位同じでそれが故に森が故郷であるとされる人間は、当然ながら森を見たり森に入ったりすると本能的に心の底から落ち着く事が出来る」という話です。
この説の真偽はともかくとして、多くの人が、森林に行ったり、木を見ると心が和み、癒されると言う事は事実であると思います。このリラックス効果は、木の香りや見た目の色など、一部科学的に実証されているとの事です。

木力館伐採見学ツアーの模様

しかし、日本の森林は、今、危機的な状況にある、ということをご存じでしょうか。
人工林(植林された森林)は1950年代から増加していますが、森林全体の40%程度にしか達していません。そして建築材に使用されるべきはずの国産の木は使われず放置され、今では輸入材(外材)が大きな割合(80~90%)をしめ、木材の自給率はなんと10~20%程度なのです。
これは今、さまざまなメディアで騒がれている食料自給率と似た事態ですが、唯一食料と違う点は、(建築材の全てではありませんが)柱や土台、梁などほとんどの使用材を輸入に頼らずに自給自足でまかなう事が、やりかたによっては出来るという事です。その一番の近道は、一般の皆さんが国産の木に興味を持ち、国産材を使う事(家具や様々な木製品、そして家づくり)に関心をもつ事だと思うのです。

「資源が少ない国」といわれる日本にも、世界に誇れる豊富な資源が2つ有ります。ひとつは水で、もうひとつが木材なのです。これからの循環型社会に向けて、有効に活用していきたいものです。