館長 木を語る

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6.天然乾燥の材木について

これまで一般の方々をはじめとして、世間の間には、本物の天然乾燥材は人工乾燥材や集成材に比べて「劣る」と言うイメージが有りました。天然乾燥した後の含水率が(人工乾燥材や集成材に比べて)高く、木の動き……狂いや表面の乾燥割れなど……が生じたりする為です。
しかし最近では、天然乾燥材に対する情報発信が進み、一部では見方が変わっている事も事実です。今回はその件についてお話ししましょう。

天然乾燥材の柱材を積み上げた様子

まず、天然乾燥材につきものの、木の”動き”といった現象は、木が「切られても生きている」という証拠であり、欠点ではないと言う事です。
つまり、例えば表面に割れ(乾燥割れ。「干割れ」とも言います)が生じたからと言って、強度的に問題が有るという訳ではありません。天然乾燥材は木の細胞が“呼吸”しています。呼吸する事により、細胞が収縮・膨張し、木が動く(表面の乾燥割れ、干割れとも言います)、と言った現象が起こるのです。木材の強度的な面から割れや反り、狂いが生じると言う訳ではないのです。まずはこの事を、理解して頂きたいと思います。

天然乾燥材は、調湿効果(周囲の湿度によって木の細胞が水分を吸ったり吐いたりする事で室内の湿度を適度に保つ)や強度的な観点から見た粘り強さ、見た目の美しさ、木の本来の香りと言った数々の優れた特徴を持ちます。

そう言った木の持つ特徴を無理矢理に変えてしまったものが人工乾燥材や集成材と言えるでしょう。人工乾燥材や集成材は、天然乾燥材に比べて木の動きが出にくい事や品質の均一化、機械加工(プレカット)の容易さといったメリットこそ有りますが、強制的に乾燥させる、接着剤を多用する事により木の本来の特徴は消え失せ、単なる「工業製品」いわゆる「新建材」と化してしまうのです。

材木屋の私(おやじ)から見れば、天然乾燥材は、人工乾燥材に比べ、色つや、香りの面でも大きく差が出ます。天然乾燥材は日常の気温、風に晒して自然な状態でゆっくり乾燥させていきます。時間は掛かりますが、木の細胞を殺すことなく、木が本来持つ独特の色つや、香りを引き出す事が出来るのです。
また、人工乾燥材に対して最近では製造コストの面でも天然乾燥材は優位に立ちつつある、とも言われています。人工乾燥材は主に化石燃料等を使って乾燥させるので、その分のコストが余計に掛かります。勿論天然乾燥材も、乾燥させる用地の確保、乾燥期間の長さやそれに伴う在庫調整の問題などは有りますが……。
最近では、立木伐採時に原木で乾燥する葉枯らしと組み合わせる方法や、人工乾燥と天然乾燥をミックスさせる方法も登場しています。

次回は、木の割れについて、詳しくお話ししましょう。