館長 木を語る

館長 木を語る

3.森林と水

さて今回は、森林と水について、お話しさせて頂きます。

前回の記事にて、日本にも世界に誇れる豊富な資源があり、それは木材と水である、とお話しました。それなのに木材の8~9割は外国産の木(外材)に依存していると言う事もお話ししました。

この事は水にも言える事で、日本の降水量は世界平均の2倍もあり、それらは日本の野山に降り注ぎます。森林に降り注いだ雨水は森林という「第2のダム」によってたくわえられ、きれいにおいしくなり、大地を、そして皆さんをうるおします。
日本の森林面積は国土の約7割もあるので水には苦労しないはずですが、近年の地球温暖化か異常気象のせいか、残念なことに川が荒れ、ぜい弱な山林が崩れてしまう事などがつい最近各地で起きている事は、皆さんご存知の通りだと思います。

また、これらの被害が海(港湾)にも達し漁業にも被害をもたらしている事もまた事実で、漁業組合が森林保護に協力している地域もあるそうです。
水に恵まれた国に住みながら、日本国民は意外に水に悩まされている、皮肉な事実であります。

埼玉県内の山林

では何故ぜい弱な山林が増えたかと言うと……日本の木を使わなくなった事が原因の一つとして挙げられます。日本では、木は育ったら切って木材として使い、そして新しく苗を植え、また育てます。このサイクルによって、森は育ち、木材が供給されるのです。
木が一般的な材木として使える様になるまで、だいたい50~80年位はかかります。まさに、自分の代で植えた苗が、子の代、孫の代でようやく実を結ぶ、といった事になるのです。逆に言えば、今伐採して使える木は、親御さん、お祖父さんの代に植えられた木、という見方もできます。木を育てるというのは、とても時間が長くかかり、地道で大変な作業なのです。

しかし、さきにお話しした通り、日本の木はほとんど使われなくなってしまいました。理由は幾つかありますが、とにもかくにも、木が使われなくなると、木の価値も下がり、やがて林業もすたれ、結果、森林は荒れてしまいます。そうなると本来の豊かな森林ではなくなり、ぜい弱な森林になってしまうのです。ぜい弱な森林では十分な保水能力がなく、水の事にもかかわってくるのです。
森林をきちんと整備し、使える木は使い、そして使っただけまた木を植え育てる。このサイクル……循環型の仕組みこそが、日本の森林、林業を支え、そして復興させる為の道であると私(おやじ)は思います。

その為には、木を使ってくれる人が居ないと始まりません。その為には、前回お話ししたように、まずは国産材に興味を持っていただく事が重要です。木に興味を持って頂ければ、木を使う機会が増え、そうなれば林業も活性化され、森林整備、森林保全が進み、同時に地域の地場産業(製材業をはじめとする様々な業種)も元気になります。森林の保水能力も上がり、水の心配も少なくなります。まさに、良い事ずくめですね。

森林と水……あまり関係がない様ですが、そこには切っても切れない深い繋がりがあるのです。皆さんも、水を飲む時、水を使う時……この水はどこから来たのか、そしてどこへ行くのか、森林の事とあわせて考えて頂ければ幸いです。