館長 木を語る

館長 木を語る

番外編.木力館10周年記念

木力館は、平成28年(2016年)4月で、開館から10周年を迎える事が出来ました。まずはこれまで木力館にご来館頂いた皆様、そして木力館建設に始まり各種イベント運営等で多大なご協力を頂いた関係各位に深く感謝御礼申し上げます。

木力館を建てること。それは、「材木屋のおやじ」であった私が、「もっと木の事を知って貰いたい」「木に興味を持ってもらいたい」との思いから始めた試みでした。

現代の世の中、「木が好き」と言う方は珍しいのでは、と館長の私(材木屋のおやじ)は肌身で感じます。そもそも、「木」というものに興味を持つ人は少ないのが現状です。
今はホームセンター等に行けば、「木」は安価かつ手軽に手に入ります。しかし、それが何の木で、何処で育ち、どのように加工されたか、どんな特性があるか。そこまで興味(と知識)を持つ人はほとんど居ないでしょう。実際、本物の木を手に取った時、それが何の木であるか全く分からないという人が大多数です。
そういう現状では、「木の文化の国」「森林大国」と言われた我が国日本のあり方としてどうなのか。
森林に恵まれ、木材としての資源が国内に豊富にありながら、外国産材を大量に消費し、国産材の需要が落ち込み国内の森林と林業がどんどん衰退していく現状をどうにかして知って貰いたい。その為には、まず木に関心を持って貰いたい……。
その思いを、「木力館」というかたちとして、建てたのです。

木力館は、材木を集めるのに数年、施工に約1年半かけて完成しました。使った材木は、珍しい木はあれど、いわゆる「高価」な木は使っておりません。
そしてほぼ全てに国産材を使い、その中でも約9割を埼玉県産の木材を使用し、「国産材」「埼玉県産材」「地域材」のPRの場としてオープンしました。
皆様には、目で見て、肌触りと足の踏み心地で温もりを感じ、香りを嗅いで、体の五感で木の良さを体感して貰えれば、と思います。

さてここで、10年前にさかのぼり、木力館建設の様子等を振り返ってみましょう。

建築途中の木力館。まだ上棟の段階です。建物本体は正六角形であることがわかります。
建築途中の木力館。伝統工法「通し貫工法」にこだわりました。
木力館、無垢の螺旋階段の加工・組み立て工程。太い材を「削り出し」で作ります。熱などで曲げたものではありません。
木力館、無垢の螺旋階段の加工・組み立て工程。太い材を、のみで削り出していきます。大工さんの熟練の技術が冴え渡ります。

 

木力館、無垢の螺旋階段の加工・組み立て工程。カンナで、曲面の表面を微調整。

 

木力館、無垢の螺旋階段の加工・組み立て工程。踏み板の側板完成。ここまで加工するのに1ヶ月かかっています。

 

木力館、無垢の螺旋階段の加工・組み立て工程。館内での取り付け作業。無垢の螺旋階段を作れる大工さんは、殆ど居ないと思います。
技術の面でも見て貰いたいとの思いで、螺旋階段を作りました。

 

建築途中の木力館。完成までもう少し!

 

木力館10周年と言う事で、「木力館落成式」の模様も振り返ってみましょう。もう10年経ったのかと言う思いで、感慨もひとしおです。

 

落成式の式典の模様。式典開始直前の様子。大勢の関係者の皆様にお越し頂きました。
落成式の式典の模様。記念のテープカット。館長の私(材木屋のおやじ)もまだ若かった!(笑)

 

落成式の式典、内覧会の様子。皆様に完成したばかりの館内をご覧頂きました。

 

落成式の式典の模様。和太鼓演奏の他、記念式典で大いに盛り上がりました。

出来たばかりの木力館は、使用した材木も、木の色がとても鮮やかで、良く言えば「華やか」、言い方を悪くすれば「まだ落ち着いてない」状態でした。
そして年月を重ね、現在の落ち着いた風合いへと進化しました。

木は年月を経ると、色合いが変化します。最初は色鮮やかでも、次第に飴色と言うか、独特の風合いになるものです。これも「本物の木の良さ」のひとつです。本物の木の持つ味わいのひとつと言えましょう。新建材やプリント合板では、ただ傷んでいくだけですが、本物の木は、傷が付いてもそれもまた味わいのひとつとなります。これもぜひ、木力館でご覧になり、実際に体感して頂ければと思います。

今後も木力館は皆様に「本物」の木の良さを伝えるべく、努力奮闘、精進して参ります。この10年の節目を経て、ますます気合いを入れ、創意工夫しつつ、今後も皆様に情報発信を行いたいと思います。

これまでの10年を糧に、この先の10年へ。これからも木力館を宜しくお願い致します。

木力館 館長
大槻 忠男