館長 木を語る

館長 木を語る

15.豊かな暮らしの為にいまの住まいをどう変えるか? 館長の考え

平成28年11月28日(月)の日経新聞電子版に、館長の私(材木屋のおやじ)の意見が掲載されました。掲載して頂き、大変ありがたく思います。
当該記事は、令和元年7月現在では日本経済新聞電子版の未来面アーカイブ「豊かな暮らしのために、いまの住まいをどう変えますか?」記事内の「読者からのアイデア」面に「伝統的建材、無垢材使用のススメ 会社役員 大槻忠男」として掲載されております。

さて、今回は、この意見にもっと肉付けをして、館長の私(材木屋のおやじ)なりの考えを披露してみたいと思います。

無垢材を使ったリフォームの例(画像はイメージです)。

豊かな暮らし、とひとくちに言っても、人が皆それぞれ違い、暮らし方も異なるので、「こういうシステムに変更すれば100%全て解決」と言う特効薬は無いのでは、と考えます。
しかしながら、今の暮らしにひとつプラスして、今よりもちょっと豊かに、素敵な暮らしを、と考えるなら、いくつかの処方箋が出てくると思います。

日本は木の文化の国です。古来より、木を巧みに使いこなし、道具を作り、家を造り、日々工夫して暮らしてきました。日本人にとって、木は、かつては無くてはならない自然の恵みであり、同時にとても身近な素材でした。

かつての家は、屋根は藁葺きか本瓦。壁は土壁や漆喰、または木の壁。床は無垢の板材や畳でした。家の建材には全て馴染み深い自然素材が使われていました。それらを使う建物が歴史となり、伝統となり、古来より受け継がれてきました。それらが「伝統的建材」と呼ばれるものです。

ところが、今の家はどうでしょう? 屋根材は安価なものに取って変わられ、壁はビニールクロス、床は合板、それらはどんな素材で作られているかも分からない、そんな時代です。
かつて使われた無垢の木や自然素材は使われなくなり、化学物質やいわゆる「新建材」といった素材が家の中を埋め尽くしています。いわゆる「シックハウス」の問題もまだまだ解決したとは言えない状況です。
これで果たして良いのでしょうか? 健康的な住まいと言えるでしょうか? 豊かな暮らし、と言えるでしょうか?

伝統的なものも、全てが100%良い訳ではありません。今の科学的進歩や優れた技術を否定するつもりもありません。
しかしながら、今の暮らし、今の家は、あまりにもコストダウン重視、効率重視のものになってしまい、出来た時の見た目は良くても中身がそれに伴っていない場合が多いのです。
ですから、ここでもう一度毎日の「暮らし」つまり「住まい」に目を向け、同時に「伝統的建材」「自然素材」の良さを取り入れてみてはどうかと提案致します。

例えばトイレのリフォームでも、アイデアと使い方次第で「自然素材」を使えます(画像はイメージです)。

では、具体的にはどうすれば良いのでしょうか。
例えばトイレのリフォーム。無垢のヒノキを使い、ヒノキ本来の香りでやすらぎの空間を造り出す事が可能です。ただ用を足すだけのトイレではなく、気分もすっきりリフレッシュ出来る「処」を目指します。

ここで「ヒノキ」とひとくちに言っても、造林木のヒノキと、天然木の木曾檜では、香りが違います。
自然の荒波の中で育った天然の木曾檜は、その強い生命力が、木としての強度、香りとしての強さとして現れます。その違いも、実際に使ってあなたの五感で体感して頂ければと思います。

お風呂場の脱衣所の模様替えも、おすすめです。青森ひば、木曾檜と言った、水に強く、香りの良い無垢材を使う事で、木の香り溢れる癒しの空間に模様替えする事も可能です。今日も一日頑張ったあなたの体を労り、明日への新たな出発の活力を与えてくれる場として、気分転換出来る心地の良い脱衣所に変身する事ができます。

木の香り、とりわけ天然乾燥の木の香りは、本来の木の持つパワーと心地良さ、安らぎを、人に与えてくれます。無垢材で出来た家は暖かく、木の香りもあって部屋の中の空気が「柔らかい」と感じます。それだけ人に優しいということです。ところが高温乾燥した木は、本来の木の香りはしません。ここが大きな違いです。

本物の木の香りを得るには、本物の木を使う事、更に言えば、天然乾燥の無垢材を使う事が大切です。これら「伝統的建材」「自然素材」を使い、住まいの模様替えやリフォームを行えば、木の香りがあふれる、まさに「豊かな住まい」「豊かな暮らし」に繋がるのではないでしょうか。

本物のヒノキの香りが大嫌い、と言う人は恐らく(ほとんど)いないでしょう。ヒノキをはじめとするさまざまな木の香りは、アロマオイルとして使われる程、心も体も癒すひとつの「力」として実際に使われ、人々の支持を得ています。

あなたも、もう一度「伝統的建材」や「自然素材」に目を向け、自然の「木の力」を使ってみませんか?
それをきっかけに、ちょっぴり「豊かな暮らし」をめざすのはいかがでしょうか?