館長 木を語る

館長 木を語る

4.木とはいったいどういうものか?(前編)

今回は、「木」そのものに焦点を当て、その良さや特徴を見ていきたいと思います。今回は前編として、木の特性をさまざまな角度から見ていくことにしましょう。

木というものには、さまざまな良さが有ります。それらは科学的にも証明されています。家の柱や壁、床などに木の柱や板を使った場合を考えてみると、次のようなすばらしい効果があります。

1.湿度を調節する(調湿機能)
部屋の湿度の少ないときは吐き出し、多いときは吸います。効果は緩やかなものですが、木と言う自然素材ならではの特徴です。「材木は呼吸している」と言われる所以です。

2.ダニなど有害な動物への効果
木の持つ独特な成分(匂いやあぶらに含まれます)によって、ダニが増えにくくなります。

3.断熱効果と蓄熱効果
厚みの有る木材は、それだけで高い断熱効果があります。
また、木材には熱を蓄える(蓄熱)効果もあります。夏は熱がこもる場合がありますが、冬場は逆に熱を溜め込む事により、木で出来た家は「温かい」と言われています。

4.床材としての安全性と快適性
木はコンクリートや鉄板と違い、適度な硬さと弾力性があり、歩いても衝撃を吸収してくれます。もし転倒しても、素材のもつ弾力性により、怪我が軽くて済む場合があります。

5.木目の独特な色による、人の目への安全性とリラックス効果
木は見た目が美しく、人の気持を安らげる効果があります。また、木は太陽の有害な紫外線なども適度に吸収しますので、目にやさしいです。

6.音響効果
木には優れた吸収・反射能力が有る為、いろいろな楽器や音響器具(スピーカーや防音材、反響材等)としても利用されています。コンサートホールにも使われるケースがあります。
また、適度に振動を抑える働きもあります。

7.木の持つ香り
それぞれの木が持つ、色やにおいの元になる成分です。木のにおいは人をリラックスさせ、集中力を高める効果があります。

8.木の強度
木材の比重当たりの引っ張り強度は鉄の約4倍、圧縮強度ではコンクリートの10倍の強度を持ちます。他の素材(コンクリートや鉄など)と比べ、重さの割に強くて丈夫、さらには適度に柔らかいと言う事が言えます。

9.木は火に強い
意外に思われるかも知れませんが、木は燃えにくい物質であると言えます。確かに木の表面や表皮、細い小枝などは簡単に火が付き燃えてしまいますが、太い木は、表面が燃えた時に炭化層を作り、それ以上中まで燃えるのを防ぎます。身近な例で言うと、キャンプファイヤーをしたとき、太い木がなかなか燃えきらないのはその為です。
ですから、不幸にも住宅が火災に遭った場合、鉄骨造りの家は鉄筋が熱で柔らかくなりひしゃげたり曲がったりして構造が早くにだめになりがちなのに対し、木造の家は柱や構造が残っている、すなわち火災時の救助や避難がより容易である可能性が有る、と言う事にもなるのです。

10.経年変化による強さ
木材は使ううちに自然と含水率が下がり、より強く、腐りにくくなり、長持ちします(自然乾燥材の場合)。木造の家(伝統工法の通し貫工法)をつくった場合、木の骨組みが少しずつ引き締まる事により強さは緩やかに上がり、強度のピークは建築から20~30年後と言われています。

11.加工性の良さ、高さ
自由自在な加工、組み立てが可能で、職人の技術が活かせます。また木の樹種ごとの特性を活かし、さまざまなモノを作る事ができます。家の構造や材料はもちろん、家具(テーブルやタンスなど)や日用品(箸、スプーンなど)から、船や飛行機の部品に至るまで、多くの場所、部分に木が使われている事は、皆さんご存じの通りです。

12.製造(加工)時のエネルギーが少ない
材木を乾燥させ、製材する為にかかるエネルギーを、他の建材を作る場合と比較すると、木はエネルギー消費が少なく、とても効率の良い素材である事が分かります。エネルギー消費が少ないと言う事は、環境に掛かる負荷が少ないと言う事なので、自然環境にやさしい素材であるといえます。

ざっと見ただけでも、木はこんなに素晴らしい特徴を持っています。
では、木は何故こうした特長を持っているのでしょうか?
その答えは、木の物理的組成にあります。

(ヒノキ材(左)、ケヤキ材(右)の電子顕微鏡写真)
この電子顕微鏡写真をご覧になってお分かりの通り、木をミクロの世界でみると、木は繊維の巻きついた細いパイプ状の「細胞壁」を束ねた物体である事が分かります。まるでスポンジか何かのようです。この組成こそ、多孔質」と呼ばれる木の最大の特徴です。木の細胞は、はじめは中にDNAや核などが有りますが、しばらくするとそれら中身がなくなり、細胞壁だけが残ります。これが木の「幹」となり、木の9割は中身の無い細胞壁で構成されています。木が生長しているときはこの細胞壁には水分が入っていますが、製材し乾燥すると水も抜けて隙間だけになります。木によって細胞壁のできかたや組成は微妙に異なってきますが、一般的にすきまの多い木は軽くてやわらかいです。代表例としては、よく工作に使うバルサ材などがそうです。逆にすきまが少ない木は一般的に重くて硬い木になります。
これらに共通しているのは、押し潰す、曲げる、引っ張るといった力に対しては意外な強さを発揮するという事です。特に繊維(縦)方向の場合は、同じ比重で比べると鉄と同じかそれ以上の強さを持っています。つまり「軽い割に強い」のです。この事から、各種建築材料としてはもちろんのこと、船の構造材や、かわったところでは飛行機の部品としても使われています。また先ほどお話しした「適度に柔らかい」ことも、この細胞壁のおかげです。外から衝撃や震動が有ると、この細胞壁の構造がクッションとなり、木材全体でしなやかに受け止めます。このお陰で、木で出来た床を歩くと、反動が少なくて疲れにくく足の負担が少なくすんだり、万一転んでも、衝撃を吸収してくれるおかげで骨折などに至る可能性が(コンクリートなど、他の建材に比べて)低くなるのです。この特徴を活かして、最近では児童・福祉施設、病院、教育関連施設などの床に採用されています。昔は木造建築物が主で木の床が一般的でしたが、次第に建築方式の多様化に伴いコンクリートや石、鋼鉄、合成タイル、ビニール性・ゴム系の素材など様々なものに変わられました。しかしここに来て木のよさが再確認されているのです。
(学校における木材利用の例。木造校舎(ときがわ町立萩ヶ丘小学校))

(学校における木材利用の例。木造校舎(ときがわ町立萩ヶ丘小学校))

あと見逃せない点は、木の熱伝導率の低さです。
例えば床を素足で歩く時、また手で壁をさわった時など、ヒヤっと感じると思います。この感覚は、同じ条件下では、木やコンクリート、鉄など物質によって全然違う筈です。
これは主に手足と物の間で移動する熱の量、つまり「熱伝導率」で決まるのですが、木はガラスやコンクリートの1/10、鉄と比較するとなんと1/330とも言われ、木は熱を伝えにくいのです。
つまり熱を急激に奪わないという事で、自分の温かさがそのまま自分に戻ってくる様な感覚になるため、温かく感じる、と言うわけです。これも、木が孔(あな)だらけ、つまり多孔質がゆえの効果とも言えます。
逆に、サウナなど高温の部屋でも、木の床やイスには座る事が出来ます。木自体はとても熱いはずなのですが、こうした熱伝導率の関係で、木の温度がそのまま伝わる事なく、熱く感じにくいのです。想像してみてください。もしサウナで鉄製の床やイスがあったなら、とても熱くて耐えられないでしょう。床やイスでなくても、サウナ室内の釘や金具などに触れるとやっぱり熱いですね。これも熱伝導率の違いによるものなのです。

もっとも、木の熱伝導率の優れた特性も、表面をウレタン塗装などで完全にコーティングしてしまうと、塗装の被膜によって熱く感じたり冷たく感じたりします。メンテナンスの面では有利かも知れませんが、これではせっかくの木の温かみが台無しです。最近では無垢材や自然素材が見直されていますが、これらを使う場合は塗装の有無、各種塗料の性質についても、よく調べておくとよいでしょう。

木にはすばらしい力がぎゅっと詰まっています。活かし方とアイデア次第で、新たな用途が生まれるでしょうし、社会の役にも立つと思われます。その為にも、もっと木をよく知って、使って欲しいのです……できれば国産、県産の木を。これが私(おやじ)の願いです。

さて次回は、木の組成、そしてそこから見える社会的な役割についてお話ししたいと思います。